1.概要
(1)背景や概要
建設工事(軽微なものを除く)を請け負うためには、「建設業許可」を取得する必要があります。
工事規模や金額は勿論のこと下請構造などによる影響が大きいため、工事に携わる会社には確かな経営や技術面、財産面での能力、また健全性が求められる為です。
また許可を取得した後は毎年の事業年度終了後に「決算変更届出」。5年毎に「許可更新」。許可に係る変更については「変更届出」が必要になります。
許可には以下の区分があります。
-知事か大臣か
・知事:1つの都道府県のみに営業所(契約締結の拠点)を置く
・大臣:複数の都道府県に 〃
※新規許可の申請手数料は大臣の方が高額。事業拡大や、営業所所在の都道府県における公共工事入札での優遇を受ける可能性が高くなる。
-一般か特定か
・一般:500万円(建築一式の場合1,500千万円)以上の請負工事が可能 ※特定建設業の元請条件を除く
・特定:元請として、下請に合計4,500千万円(建築一式の場合7,000千万円)以上の工事を発注可能
※上記は税込金額。特定の方が許可要件が厳しい。
また許可を受けた営業所については、許可業種以外の軽微工事は請け負えないのでご注意。
(2)要件
不正確かもしれませんが、簡単のため「経営業務の管理経験:営業取引上で対外的に責任を持つ地位にあり、建設業の経営業務について総合的な管理や執行の経験」→「経営経験」とします。
①人材 :経営経験のある役員(経営業務の管理責任者など)、技術者(専任技術者)の配置
※以下簡単のため、経営業務の管理責任者=経管、専任技術者=専技と略します。
②場所 :営業所としての建物、看板、営業スペースや事務機器
③財産面:純資産500万円以上またはその調達能力
④事業者の状況:社会・労働保険の加入
⑤欠格要件の非該当や誠実性
まず⑤と①が満たせるかが重要。
(3)メリットとデメリット
①メリット
・高い金額の請負工事が受注できる
・金融機関や発注者からの信用度が上がり得る
・公共工事における入札参加資格要件の一つが満たせる
②デメリット(?)
・許可申請の手間や手数料がかかる
・毎年の決算変更届出や、5年毎の許可更新、そのほか変更に都度での変更届出が必要
・処分(許可取消、営業停止、指示処分)に値する違反をした場合、公表される
各都道府県HPのほか国交省のネガティブ情報等検索サイトに載ってしまう。
2.手順や必要書類
(1)手順
①要件確認
-経管
営業所に常勤で配置。経験に係る証明期間についても常勤である必要あり。
ア.常勤役員1人で以下のいずれかに該当
(1)建設工事を営む会社での役員や個人事業での事業主経験5年以上
(2)上に準じる地位(執行権限付与)としての経営業務の管理経験5年以上
(3) 〃 として経営業務の補助経験6年以上
イ.常勤役員+直接補佐者での体制 ※高難度パターン
・『「建設業での[経営経験2年+準じる地位経験5年]または「[建設業での経営経験2年]+[建設業以外での経営経験5年]」』+『直接補佐者として建設業者や建設業での[財務+労務+運営]経験』
※補佐者については一人で財務・労務・運営補佐を兼ねることが可能。
-専技:許可業種での「資格のみ」or「資格+実務経験年数」or「学歴+実務経験年数(高卒5年、大卒3年)」or「実務経験年数のみ(10年)」
※経管同様、営業所に常勤で配置。
-欠格要件非該当と誠実性:要件に当てはまっておらず誠実性があればOK
-財産面:直近の純資産(※)が500万円以上、または残高証明書準備(発行後1か月以内、見せ金もOK)
※会社設立時や個人事業開始時ならば資本金や元入金。
あとはキチンとした営業所があって、社会・労働保険加入していれば、ほぼOK。
②必要書類の準備
・下記書類を集めるだけ
・電子申請(JCIP)の場合はスキャンしてデータ化
③申請
・電子申請(JCIP)が圧倒的に早いし労力小
※正副本の印刷や郵送手配も不要。役所側的にも紙面からの入力が省けて助かるはず。
・JCIPを使わない場合、原則的には郵送
※窓口申請が不可と言う訳では無い。
④許可が通ったあと
・許可通知書の受け取り
・許可証や看板作成
⑤様々な手続き
・決算変更届出(毎年)
「過去3年の施工金額」「工事経歴書」「決算書」などを作成。
新規申請での直近事業年度の工事や決算書部分のみ抽出した感じ。
・更新(5年ごと)
新規申請の縮小版。
変更が無ければ使い回し可能な情報が多いし、省略可な添付書類もある。
・変更届出(必要な変更の都度)
・業種追加や許可換え、般・特新規
「業種追加」:一般(又は特定)許可業者が、他の業種で一般(又は特定)建設業許可取得
一般と特定両方の許可業者が、一般または特定の許可取得
「許可換え」:大臣⇔知事の変更。新規申請に同じ
「般・特新規」:一般のみ(又は特定のみ)の許可業者が、新たに特定(又は一般)の許可申請
または一部の業種を廃業して、特定(又は一般)で許可取り直し
(2)必要書類
福島県ではチェックリストと提出書類の内容確認一覧が便利。
書類 | 備考 | ご参考 |
---|---|---|
書類 | 備考 | ご参考 |
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(3)提出や問い合わせ先
・建設業許可・経営事項審査申請受付窓口一覧
・(いわき市の場合):いわき建設事務所 行政課
〒970-8026 いわき市平字梅本15
TEL:0246-24-6109
※急ぎで無ければ、建設事務所宛だが問い合わせフォームも使用可能。
3.注意点
注意箇所 | 備考 |
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人工出し | ・建設業における人工出しは職業安定法、労働者派遣法等で違法行為にあたる ・経管の証明期間における工事経歴には使えない ・ただし専技の実務経験の証明期間には使えるらしい ※これはどういうことだろう? 人工出しには請負契約書は無いから、それを使わない証明パターン(福島県では他社の許可業者の決算変更届出)に限定されるはずだが、それだと許可業者で人工出しをしていたことになるので、明らかにアウトな気がする。 ーKiND行政書士法人/人工出しは建設業許可を取得できない?建設工事として認められる? |
定款目的に許可を取りたい業種を含む記載が無い | ・会社法上では違反(罰則なし)だが、福島県では許可申請時に定款目的から抜けていても許可申請は可能 ただし後日、定款変更や変更登記するよう求められている ・都道府県によって扱いは異なるので要確認 |
原則的な添付書類 | ・原則、手引き記載の添付書類が全て ・手引き記載の書類が揃えられない場合に初めて相談が望ましい |
常勤役員と直接補佐者による経管 | ・過去の説明によると、相当に難しいケースらしい ※そもそも、その状況で許可を取ろうというのが個人的には微妙な気がする。 |
認可 | ・事業承継や法人成りの際に、契約書等の証明書類作成や承継元・先での事業終了と開始について疑義が生じないように進めることが出来れば、認可申請を用いることが出来、新規申請手数料は掛からず許可番号も引き継げる ・ただし条件が厳しく事前審査や本審査に時間を要するので、認可申請を主に周囲の予定を組むのが推奨される ※会社設立、設立届、社会保険加入などに予定を左右されてしまうと難しい。 |
税金滞納でも一応許可は取れるらしい | ・財務状況的に微妙な気もあるが、止むを得ない事由があるかもしれないし許可申請においては単なる確認に過ぎない模様 -建設業・不動産の許認可取得センター/税金滞納でも建設業許可は取得や更新はできる? |
白色申告の事業者 | ・白色申告の事業者でも、キチンと青色に相当する決算書を作成すれば建設業許可取得は可能 ※過去に、白色申告で資産や負債に係る情報が無い状態での決算変更届出を依頼されたことがある。 一体、どうやって今まで決算変更届出の決算書を作ってきたのか、いやそもそも建設業許可をどうやって取ったのか、未だに疑問ではある。一応、開業や設立時ならば可能ではあるか? |
営業所と登記簿の本店所在が異なる | ・事実上の所在として、契約締結を行う実質的な営業所の所在を併記する 急いで本店移転などの変更登記をする必要は無い。 ・JCIPでは申請者欄は登記簿上の所在に固定されるので、申請書の方に事実上の所在を書く |
経管の証明について、他社の許可業者から期間分の許可通知書や決算変更届出が得られない場合 | ・ →少なくとも福島県は不可。止むを得ない場合は個別に相談して検討してもらう。 -福島県/建設産業室/既に建設業の許可を受けている方へ ※「その他」-「建設業許可証明書の交付」の箇所をご参照。 様式を見る限り、現在得ている許可証明で過去分は含まれないように取れるが。 もし過去分が全て出せるならば原則通りの添付書類は一体何なのだろう? これが可能ならば、他社にわざわざ許可通知書や決算変更届出を探してもらうより最初から証明願で済ませた方が、圧倒的に労力小になってしまう。 |
経管における過去の経験の常勤性 | ・経歴に常勤か否かを記載するが、福島県ではその常勤性自体の証明までは求められていない ※手引き通りの個人での確定申告書や、別法人の許可通知書等+商業登記簿のみで可能。 もし虚偽があれば大変なことだし、疑義があれば追加書類を求められるとは思う。 |
処分パターン | ・許可申請における虚偽:誓約書偽りや証書での賞罰隠し ・許可取得後も人工出しをしている ・専技が営業所近隣以外で現場に出たり、有り得ないほど同時期に複数の現場に出ている ※違反例は余りないが経管も同様に不可。 ・会社や役員が罰金刑や懲役刑を受けた ・架空の営業所で所在確認不可 ・経管や専技不在になっても変更届出せずに営業継続 ・許可取得前に軽微でない工事を受注 ・配置技術者に相応しくない者を置いた ・行政からの指示処分に従わなかった ・経審を受けずに公共工事受注 ・決算変更届出を期日までに出さず複数年分まとめて出した ・特定住宅瑕疵担保責任を履行する措置を怠った |
建設業許可が不要な税込500万未満の請負工事について | ・一つの工事にも関わらず工期を分けて金額を縮小するのは不可 ・附帯工事、材料費、運搬費込みの金額 ・他の業者との共同受注により材料費を他に負担してもらって、自身の受注金額から材料費や運搬費を減らすのはアリらしい -建設業・不動産許認可取得センター/【建設業許可】請負金額に材料費は含む?含まない? ※事例1)ご参照。 |
登記されていないことの証明書取得にあたっての委任状は自署不要 | ・委任者本人からの了承を得ている前提だが、委任者からの自署不要で受任者側でPC作成できる ・例えば、もし急ぎで取得する必要がある場合に、東京への郵送取得ではなく地方法務局近くの者へ委任してもらい、その後郵送してもらえば多少の日数削減になるはず ※もちろん慎重を期すならば、直接本人直筆の委任状をもらうことが望ましい。 |
【変更届】代取変更の際は、それに伴う役員等の変更情報も併記する | 例:代取が交替(旧代取Aが取締役、取締役Bが新代取になる場合) ・代表者:A → B ・役員: 取締役 B → 代表取締役 B 代表取締役 A → 取締役 A ※登記簿を添付するものの、代表者変更の記載のみだと変更届だけで取締役の変更全てが把握できない。 みなし登録電気工事業の変更届も、同様の記載をした方が無難。 -アールエム行政書士事務所/【記載例付】建設業許可の変更届|役員等に変更(就任・退任等)が生じた場合 |
経管や専技候補者の住民票上の住所と居所が異なる場合の常勤性 | 以下は福島県の一部の建設事務所における情報。提出先への事前確認は必要。 ・通える距離で実際に通勤していて、健康保険の情報と符合していれば問題無し ・経管の証明書や略歴書に「住民票上の住所」「事実上の住所」を併記する ※比較的近くであれば居所の証明書類は不要らしい。 ・(いわき市では)原発災害による避難の場合、届出避難場所証明書も求められる |
他社役員を兼務で経管に据える場合の常勤性確認 | 提出先への事前確認は必要。いわき市では ・自社の社会保険被保険者になっていることが確認できれば良し |
法人新規で、申請までに定款変更している場合 | 提出先への事前確認は必要。いわき市では ・代表印押印入りの現行定款コピーのみで良し ※提出先によっては、原子定款+定款変更時の株主総会議事録の場合もある。 |
4.当事務所のサポート内容と料金
(1)サポート
・許可申請における書類作成や申請代理
(2)料金(税込)
・7万円~
※上の最低金額は、あくまで経管や専技の証明がシンプルなケースで、手引き通りの書類がスムーズに揃う場合になります。
5.ご参考HP
(1)福島県
・初めて建設業の許可を受ける方へ
・建設業許可申請の手引・様式等ダウンロード ※ここに様式などが全てまとまっています。
・建設業許可業者名簿 (福島県内に主たる営業所のある業者)
・建設業法に基づく違反業者に対する監督処分の状況 ※違反事例の把握。
(2)国交省
・ネガティブ情報等検索サイト
6.更新履歴
・2024/02/13:ページ公開
・2024/03/08:「3」追記
・2024/06/11:「2」「3」追記
・2024/07/03:「3」追記
・2024/07/11: 〃
・2024/09/26: 〃
・2024/10/09: 〃