建設特定技能受入計画の新規申請

1.概要

(1)背景や概要

在留資格の一つである「特定技能」。
建設業において特定技能1号として外国人を雇用するためには、事前に国交省へ「建設特定技能受入計画の申請」をする必要があります

申請においては受入企業や外国人に係る添付書類を添付する必要があり、労働条件や賃金などの適正も審査されます。
おそらくシステムでの入力作業よりも、添付書類の準備・確認や補正に労力を要するはずです。

添付書類の内容確認を含めると、おそらく建設業許可申請の2~3倍は大変では無いでしょうか?

※特定技能1号:特定産業分野における相当程度の知識または経験が必要な技能を要する業務に従事する外国人向け在留資格。在留期間は通算5年で家族帯同は原則不可。
2号の場合は相当程度ではなく「熟練」が必要な業務となり、在留期間の更新上限無しで扶養配偶者や子の帯同も許される。

(2)要件

・受入企業
「建設業許可所持」「JAC加入」「建設キャリアアップシステムへの事業者登録」
「適正な労働条件・賃金、就労計画」「安全衛生や技能向上に係る方策あり」
「外国人への十分な説明能力あり」
「過去5年間以内に建設業法における監督処分無し(申請後も含む)」

・受入予定の外国人
「業務従事に足る技能や経験あり」
※特定技能への移行が認められる技能実習や建設就労の修了。

2.手順や必要書類

(1)手順

①添付書類の収集・整理

・代理申請の場合は委任状も作成
・コピーを書面で入手しなくとも、受入企業側でスキャンが可能ならばデータでのメール添付や共有ができる
※ただし原本の直接確認が入らない問題があるので、別途真実性の担保が必要になる。
しかし、そもそも実際の代理申請では登録確認機関を介した書類準備が多いはずなので、代理人が毎回出向いて原本を直接確認というのは難しいと思う。
・外国人就労管理システムのアカウントも作成しておく

②入力内容の整理・下書き

・エクセル等で入力項目に対する記載内容をまとめておくと〇
※申請時は、テキストエディタに貼り付けて確認した上でシステムに貼付け入力すると良い。
・添付書類のファイル名も企業名と連番で定型的に生成できるようにしておけば、統一されるので〇

③システムでの申請

※入力内容はあとでpdfダウンロードできるが、スクリーンショットも撮っておいた方が良いと思う。

(2)必要書類

no 書類名備考
登記事項証明書(履歴事項全部証明)・新規申請の場合は現在事項証明でも良い
・申請時点で発行後3ヵ月を超えないよう注意
2建設業許可証有効期限内のもの。
※補正が入った時点で有効期限を過ぎた場合は、更新後の許可証に差し替える必要あり。
3常勤職員数を明らかにする文書・社会保険加入の確認書類。
直近の厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書が無難。
・被保険者整理番号のみにマスキング
・氏名横に「実」「建」など区別できる一文字を入れる(手引)
4建設キャリアアップシステムの事業者IDを確認する書類・事業者IDが記載された「ハガキ」又は「メール」、若しくは「キャリアアップシステムログイン画面の写し
・パスワードにマスキング
5特定技能外国人受入事業実施法人に加入していることを証する書類・所属建設業者団体がJAC正会員の場合
当該建設業者団体が発行した会員証明書の写し
・JAC賛助会員の場合
JACが発行した会員証明書の写し
6(代理申請の場合)委任状日行連の委任状サンプルを活用するのが無難。
7ハローワークで求人した際の求人票適正な条件であること、書類「8」~「14」との整合が必要。
8就業規則及び賃金規程
※退職金規定がある場合は、それも提出
常時雇用人数が10人未満の場合は添付必須でないが、作成している場合はおそらく添付を求められるはず。
9時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)
変形労働時間に係る協定書・協定届・ 年間カレンダー
10建設キャリアアップシステムの技能者IDを確認する書類
※技能者カードの写し
申請時点で未取得であれば、理由書を添付。
※申請済みならば、証左として返信メールの添付を求められると思う。
11同等の技能を有する日本人と同等額以上の報酬であることの説明書指定様式を使用
12同等の技能を有する日本人の賃金台帳
※直近1年分、賞与含む
13同等の技能を有する日本人の実務経験年数を証明する書類様式は任意だが参考様式を使用するのが無難
14特定技能雇用契約書及び雇用条件書の写し
15雇用契約に係る重要事項事前説明書(告示様式第2)指定様式を使用
※外国人が十分に理解できる母国語併記版
インドネシア語カンボジア語タイ語タガログ語ネパール語ベトナム語ミャンマー語モンゴル語英語中国語
※書類「7」~「14」間の整合性や、システム上での入力内容との一致も念入りにチェックされる。

(3)申請や問い合わせ先

・申請:「外国人就労管理システム」上でのWEB申請になります。

・問い合わせ先:受入企業の所在地を管轄する地方整備局です。
建設分野についての問合わせ先」ご参照。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島):022-263-6131
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野):048-601-3151

3.注意点

注意箇所備考
期限切れや古い情報補正が入った時点で許可期限を迎えている場合は、期限内のものでの差し替えが必要。
・建設業許可証
・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書
・時間外労働や変形労働時間に係る協定届など
※登記事項証明書と賃金台帳、委任状については、申請時に直近であればおそらく大丈夫。
最低賃金改定時期補正時の最低賃金が申請時のものより上がり、報酬予定額(基本給+一部の諸手当)が[最低賃金×1.1]を下回る場合がある。
※10月前後での申請・補正には注意し、ある程度余裕を持たせた基本給や諸手当設定にする必要があると思う。
国交省側の基準見直しや様式改定変更に対応できるよう、頻繁に公式HPを覗いた方が良い。
[7]~[14]の内容と整合性・内容に不備があると、複数の添付書類に渡り補正が必要になってしまう
※整備局の担当者によっては、雇用条件書と重要事項事前説明書の補正を保留してくれる。
雇用契約書・条件書・契約書への署名はアルファベットで、日本語と母国語欄への二か所必要
※区別できる形での母国語併記も可能だが、アルファベット表記は必須。
・母国語併記の漏れ注意
※中国語の場合の漏れを大目に見てくれる場合があるが、基本的には漏れなく埋める必要あり。日付や金額、☑欄が漏れやすい。
重要事項事前説明書・母国語併記についての注意は「雇用契約書・条件書」に同じ
※最後の説明者と受入企業欄も抜けないよう注意。
・安全衛生教育
従事作業を踏まえて講習等の名称、受講時期、目的、内容等の具体的記載を求められる場合あり。
・技能の習得:到達目標や受験時期などの記載を求められる場合あり。
※担当者によって対応が異なる部分だが、最初から厳しい場合を想定した方が良いと思う。
委任状の差替え申請後に委任状に関する補正指示が入った場合、再作成する委任状の委任日は「初回作成時の年月日」で良い。
※申請時に実質的な委任があったことは確認できるだろうし直近でも良いとは思うが、申請以前に作成したものと差替えという意味で。
気付き次第、注意点を追加予定。

4.当事務所のサポート内容と料金

(1)サポート

建設特定技能受入計画の新規申請。
システムでの申請・補正が基本ですが、添付書類のチェックもある程度行います。

(2)料金

1申請あたり70,000円~。
※ただし添付書類の確認が多い場合や外国人が3人以上の場合など労力が大きい場合は、追加で料金を頂きます。

5.ご参考HP

国土交通省/建設産業・不動産業_外国人材の活用

申請の手引き、様式、システム操作方法【特定技能制度(建設分野)】

外国人就労管理システム

ネクステップ行政書士事務所/【徹底解説】建設業で特定技能人材を雇用するまでの流れについて
※非常に分かり易く整理されているので、ここを読めば全体像から詳細まで掴めるかと思います。

(一社)建設技能人材機構/外国人受入れマニュアル
※第1章のはじめ。加入が求められるJACのページです。

6.更新履歴

・2023/05/09:ページ公開
・2023/05/11:単語重複部分を修正
・2023/05/12:参考HP追加
・2023/05/25:「2-(2)必要書類」「3.注意点」修正

建設業許可や経審等の電子申請(JCIP)

1.概要

(1)背景や概要

従来の書面での提出に加えて、ネット上のシステムを用いての申請が可能になりました。

申請における添付書類もデータ添付ですので、PC操作に慣れた申請者や代理人にとっては利便性向上となるかと思います。
代理申請では紙面での委任状作成は不要となり、gBizID同士で結んだ委任関係を用いたシステム上での委任状の作成・承認となります。

(2)要件

申請者がgBizIDプライムを取得している必要があります。
代理申請では、代理人もgBizIDプライムを取得していなければなりません。

※gBizIDプライムから作成したgBizIDメンバーでも可能。
gBizIDについてはこちらの記事にまとめてあります。

マニュアルでは「1.1.2.gBizIDプライムアカウント」(p26~)「1.2.委任状作成」(p34~)をご参照。

(3)メリットとデメリット

-メリット
《電子申請ならではの利便性》
・書面での原本提出が要らないため、データの入力と添付のみで申請可能
・内容は途中で保存でき、[申請・届出一覧]メニューから再開できる
・代理申請は、gBizID同士の委任関係を用いてシステム上で作成・承認する形のため簡易
※建設業の代理ではgBizIDエントリーは使えず、gBizIDを持たない申請者からの「委任申請書」も使えない
・書面申請の場合と比較して、省略可能な書類が多い
・申請データはpdfとして一括ダウンロード可能
※許可が通った後に一括ダウンロード+結合したデータをお客さんに渡せば、それが副本となる。ファイル結合ツールも使える。
・入力データについては、次回以降への使いまわしも出来る
・申請手数料も証紙等では無く電子納付
・JCIPが対応している建設業アプリならば、出力データをJCIPへインポート可能
・(特定かつ法人のみ)e-Taxと連携すれば納税証明書の添付不要

-デメリット
不正ログインや虚偽申請
無権利者や無資格者による代行
※これは建設業に限らない。
ただし疑義があった場合の発覚は容易そうなので、利便性に対する危険性の比重はかなり低いかもしれない。
システム操作や入力における慣れや、エラー発生時の対応が必要(「3.注意点」ご参照)
※そのうち、トラブルケース情報など充実してくるとは思う。

2.手順や必要書類

(1)手順

基本的には書面で出す場合と変わりません。
必要な証明書や添付書類等を取得し、必要事項を入力のうえ添付書類データを添付し、申請するだけです。

書類は電子データで、手数料納付も原則的に電子納付になりますので、書面提出や現金が不要になります。
代理申請の場合は、代理人が納付します。

詳細は操作マニュアルをご覧下さい。

(2)必要書類

渇愛します。
操作マニュアル(p56~)の必要な書類一覧をご参照下さい。
※ただ◎が付いている書類にも、システム上では任意のものがあったりします。

(3)提出や問い合わせ先

-国土交通省不動産・建設経済局建設業課
・電話:03-5253-8111

3.注意点

種類気になった点備考
許可更新《連絡先》
代理申請の場合は、申請書の連絡先に代理人情報が自動入力される。
書き換えは可能。
・紙面申請:代理人連絡先に加えて申請担当者の所属や氏名、連絡先を記入
・電子申請:代理人か申請担当者のいずれか
 〃《エラー例》E00259:「営業所一覧表」「常勤役員等証明書」
それぞれ「使用人の一覧表」「常勤役員等の略歴書」が作成済みで無いとエラーが表示される。
申請書のトップに戻り、指定された書類を作成すればエラー解除される。
それらを先に作成しておくのも手。
 〃《エラー例》E00017:「常勤役員等の略歴書」「営業の沿革」
期間における「至」を空白にするとエラー。
沿革でも途中空白にするとエラー。
・紙面の場合は至の記述を省略できたが、電子申請では埋める必要あり。
・沿革での許可状況欄で「以後、更新」といった記述を使いたければ、直近の許可取得記載に追加して二行にするのも良し?
 〃《ワーニング例》W00057:「健康保険等の加入状況」
列[営業所の名称]で主たる営業所の名称が正確に記入されていてもワーニングになる。
ワーニングなのに右上の[戻る]ボタンでも戻れない。
ウィンドウまたはタブを閉じたうえJCIPのトップに入り直し、[申請・届出一覧]から再開すれば一応解決する。
 〃《システム上の問題》
突然、画面遷移エラーが発生し、入力継続できなくなる場合がある。
JCIPのトップに入り直し、[申請・届出一覧]から再開すれば一応解決する。
入力の際は下書きからのコピペこまめな保存が良いと思う。
 〃《添付書類の省略》
・役員の身分証明書:任意
・商業登記事項証明書:任意
・営業所の実態を確認する資料(内観・外観写真や建物登記事項証明書など):任意
・健康保険と厚生年金、雇用保険の加入状況証明:任意
・専任技術者の常勤証明(健康保険証等):不要らしい
・法人番号確認書類:電子申請では不要
任意のものを添付する分には全く問題無し。
身分証明書が任意になっていたのには少し驚いた。

変更有の場合など、例え任意でも実質必須のケースもあるだろうから、その点ご注意。
 〃《ファイル添付》
添付ファイルはアップロード後に保存すると、システム固有の番号を含んだ名前へと変更される。
結局変わるので、ファイル名を気にする必要は無し。
もちろん自分が区別できるよう整理しておく分には良いと思う。
役員等の変更法人代表者変更に伴うgBizID情報との齟齬・法人代表者が変わった場合は、新たな代表者でgBizIDを再取得のうえ旧ID情報を引継ぎする必要がある
・しかし登記完了後にgBizIDを取り直してから変更届出を行うとなると、おそらく時間的に厳しくなるはず
・許可官公庁次第だが、旧IDでの変更届出後に新ID再取得で問題ないと思う
でないと非常に不便になってしまう。
※代理申請の場合は、代表交代前に委任状を作成するのも手かと思うが、それでも申請者が旧代表者のままという実態との齟齬は生じる。
福島県は、新ID取得の必要あり。
代理人情報・連絡先の「所属」「FAX番号」は、申請や届出時に毎回記入する必要がある
「電話番号」にもハイフンを入れ直す必要あり
・委任状で「FAX番号」を入れたとしても連絡先には使いまわしされない
gBizIDから情報を引っ張ってくるので、仕方無いのかもしれない。

4.サポート内容と料金

(1)サポート:特になし

(2)料金  : 〃

5.ご参考HP

(1)公式HP

国交省/建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP:Japan Construction Industry electronic application Portal)

電子申請システム(JCIP)

建設業許可等電子申請システムの概要(令和4年10月時点)

操作マニュアル1.4版(R5/4更新)

別紙:「申請・届出書類ダウンロードファイル名一覧」「電子署名検証方法例」

6.更新履歴

・2023/02/27:ページ公開
・2023/04/20:操作マニュアル1.4版(R5/4更新)に合わせて、リンク等を修正
・2023/06/27:注意点追記
・2023/07/05: 〃